消費生活相談員資格試験 過去問解説

消費生活相談員資格試験対策としては過去問を多く解くことが近道です。しかし、過去問の回答の解説がなかなか市販されていないため、独自で作成

消費生活相談員資格試験 30年度 11問

平成30年度 消費生活相談員資格試験 11問

11. 次の文章のうち、下線部がすべて正しい場合は〇を、下線部のうち誤っている箇所がある場合は、誤っている箇所(1ヵ所)の記号を解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。※誤っている箇所がある場合は、1ヵ所である。 。

 

① 「契約自由の原則」は近代民法の基本原則である。民法強行規定に反する合意は、公序良俗等に反しない限り有効である。一方、この原則を強調しすぎると弱者の権利が害されることになる。そのために、借地借家法消費者契約法等の民法の特別法が制定され、これを制限している。

【解答】 ✖ ア ➡強行規定がある場合、合意より優先される。

  • 人は契約を結ぶか結ばないか(締結の自由)、誰と結ぶか(相手方選択の自由)、書面契約か口頭契約か(方式の自由)、どのよう内契約内容にするか(契約内容の決定の自由)など、相手と合意があれば自由に決められる ➡契約自由の原則
  • 例外的に必要な項目について強行規定が定められ、契約当事者間による合意がある場合であっても、その合意よりも優先される。
  • 例えば、民法146条は「時効の利益は、あらかじめ放棄することができない」と定めており、契約で時効を放棄する規定があっても無効である。
  • 公序良俗に反する行為も無効
  • 弱者の権利を守るため、民法の特別法として労働法、消費者契約法借地借家法、PL法などがある。

 

② 契約は、申込みと承諾の二つの意思表示の合致によって成立する。申込みの誘引は、相手方に申込みをさせようとする意思の通知であり、㋐申込みではない。テレビ CM や店頭の広告表示は、一般に㋑申込みの誘引と解されている。隔地者に対する申込みの意思表示は、㋒その通知が相手方に到達したときからその効力を生ずる。

【解答】 〇

  • 申し込みの誘因とは、相手方を誘って申し込みをさせようとする意志の表示で、例えば、求人広告、スーパーの広告のチラシなども該当する。
  • 申し込みの誘因は、民法上の「申し込み」とはいえず、これに承諾の意思表示をしても、それだけでは契約が成立しない。(これで契約が成立したとすれば、求人広告を見て応募した人は、全員採用しなければならないことになってしまう)
  • 民法上の「申込み」は、相手方の承諾があれば、直ちに契約が成立する程度の具体性を要すると考えられている。(タクシーの「空車の」表示は、「申込み」と考えられる)
  • 隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達したときからその効力を生じる。申し込みが相手に到達するまでは、申込者は自由にそれを撤回できる。そかし、承諾は通知を発した時に、契約自体は成立する。
  • 隔地者に対する意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、又は行為能力を喪失した時であっても、その効力を妨げられず、相手が承諾すれば契約が成立する。

③ 売買契約のように当事者の合意のみによって成立する契約を、㋐諾成契約という。これに対して、当事者の合意以外の要件が揃わないと不成立、あるいは無効となる契約もある。例えば、㋑寄託契約等、物の交付を成立要件とする契約や、㋒保証契約等、書面でしなければその効力を生じない契約がある。

【解答】 〇

  • 当事者の合意だけで成立する契約を諾成契約。物の授受により効力が生じる契約を要物契約(消費貸借契約・使用貸借契約)という
  • 契約成立に、契約書の作成が必要など一定の要式を求める契約を要式契約という(保証契約、定期借地契約等。任意後見契約は公正証書による契約が必要)

  

④ 未成年者は、法律行為を判断する能力が十分ではないので、㋐意思能力がないとされ、未成年者が法律行為をする際に法定代理人の同意がない場合には、㋑未成年者自身又は法定代理人はその法律行為を取り消すことができる。ただし、未成年者が婚姻した場合や、㋒贈与を受けるなど単に権利を得る法律行為等については、単独でできる。

【解答】 ✖ ア ➡ 未成年者は意思能力がないのではなく、判断能力が不十分

  • 法定代理人の同意が必要で、同意のない法律行為について未成年者自身も自らの契約を取り消すことができる。
  • 法定代理人の同意が不要なケース「贈与など単に権利を放棄したり、義務を逃れる行為」「法定代理人が目的を定めて処分を許した財産の範囲での契約(参考書を買ってきなさいと3万円を渡したケース)」「目的を定めないで処分を許した財産の範囲内の契約(おこづかい)」「法定代理人から営業を許された範囲内(経営であり、就労ではない」「未成年が婚姻した時、成年に達したとみなされる」「成年と詐術した場合」
  • 取り消された行為は、最初から無効であったとみなされるが、現に利益を受けている場合は返還の義務を負う。

 

⑤ 無効とは、㋐その法律行為に対し法律が初めからその効力を認めないことである。公序良俗違反の契約の無効は、㋑誰からでも㋒いつでも主張できる。

【解答】 〇 

  • 代表的な無効は「錯誤無効」「公序良俗違反」「意思能力のない者の意思表示」
  • 初めから、法律行為の効果がなかったとされる。
  • 無効を主張できる期間の制限はなく、無効を主張するにも制限がなく、三者もできる

 

⑥ 製造業者が欠陥のある商品を製造し、これを小売業者が販売し、小売業者から購入した消費者がけがをする等の損害を被ったときには、消費者は製造業者に民法上の不法行為責任を問うことができる。その責任が認められるためには、製造業者の㋑故意又は過失を消費者が主張立証する必要があるが、これが困難であること等から、特別法として製造物責任法が制定された。

【解答】 〇

  • 民法不法行為➡PL法 「過失」➡「欠陥」
  • 従来は、民法709条の不法行為により、製造業者の過失(注意を怠ったため事故を起きたこと)を被害者が証明しなければならなかったが、PL法で被害が発生した場合は、製品の欠陥によって生命身体財産に被害を被ったことを証明すれば損害賠償を請求できる。

 

代理人が、代理権の範囲内において㋐本人のためにすることを示して行った意思表示は、本人に対して効力が生じることになる。代理権を有しないAが本人Bの代理人として契約した場合は、無権代理になることから、Bに対してその効力は生じない。ただし、Bが追認したときは、別段の意思表示がない限り、㋒追認の時以降、Bに対して効力が生じることになる。

【解答】 ✖ ウ ➡ 追認の効力は、無権代理行為の時まで遡る

  • 代理権がないのに、代理を行った場合を無権代理といい、本人が追認しなければ効力を生じない
  • 追認の効力は、無権代理行為の時まで遡り、代理権が存在していた場合と同じように、当初から本人に行為の効果が帰属していたことになる。
  • 無権代理行為をされた相手は「本人に対して追認するか催告する」「本人が追認するまでに契約を取り消す」ことができる。

  

最高裁判所判例では、敷金について、賃貸借契約に際して賃借人から賃貸人に交付される金銭であって、㋐賃料債権など賃貸人の債権を担保する目的のものとされている。また、敷金返還請求権は、㋑賃貸借契約終了の後の建物等の明渡しが完了しないと発生せず、賃借人から敷金の返還と引換えに建物を明け渡すという主張は認められないと、判断されている。

【解答】 〇

  • 敷金は、賃借人の賃料債務、その他債務を担保する目的で、賃借人から賃貸人に交付される金銭。
  • 原則として、契約終了の際に、債務不履行がなければ全額賃借人に返還される。
  • 賃借人は、借家契約が終了し、借家を明け渡すまでの間敷金の請求、敷金の滞納家賃等への充当を請求できない。

 

⑨ 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって効力を生じる。委任の受任者は、委任事務の処理に対して善管注意義務を負う。委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができるが、相手方の不利な時期に解除したときには、㋑やむを得ない事由がある場合を除いて、損害賠償をしなければならない。病院での診察等、法律行為ではない事務の委託をする契約は、事務管理という。

【解答】 ✖ ウ➡ 準委任に該当

  • 当事者の一方がある法律行為をすることを相手方に委託し、相手方が承諾することによって効力を生じることを委任契約という。
  • 諾成契約、無償(原則)、片務契約(原則契約したほうだけが債務を負う)
  • 善管注意義務をもって自己の裁量で仕事を行うという独立性の点で、雇用契約と区別され、仕事の完成を目的としないことは請負・委託とも区別される。
  • 解除はどちらからでもできるが、一方の相手側に不利な時期に委任契約を解除したときは、損害賠償が生じる。
  • 法律行為でない事務の委任について、委任について準用するので「準委任」という。医療、エステ、教育サービス等があたる。
  • 義務がないのに、他人のために他人の事務を処理した場合を「事務管理」という。管理者に善管注意義務と費用償還請求権が発生する。(留守番していた友人が荷物を受け取ったなど)

 

債務不履行には、履行遅滞履行不能不完全履行の3類型がある。債務不履行があった場合には、債権者は債務者に対して損害賠償を求めることができる。損害賠償請求の要件としては、債務者に帰責事由があることが必要であり、帰責事由については㋑債権者が証明しなければならない。もっとも、㋒金銭の給付を目的とする債務の不履行については、債務者は不可抗力であっても損害賠償責任を負う。

【解答】 ✖ イ ➡ 帰責事由の立証責任は債務者にある

  • 履行遅滞において、相手方が相当の期間を定めてその履行を催告し、その期間内に履行がない時は、契約を解除できる。
  • 履行不能の場合、催告なしで直ちに契約解除できる。
  • 不完全履行の場合、後から完全に履行する(追完可能)であれば、相当期間を定めてその履行を催告し、その期間内に履行がない時は契約解除となる。追完不可能であれば、催告なしで契約解除が可能。
  • 帰責事由の立証責任は債務者にあるとされている。債務者が履行すべき義務を負っている以上は、履行しなかったことを正当化する責任は債務者にあると考えるからである。