消費生活相談員資格試験 過去問解説

消費生活相談員資格試験対策としては過去問を多く解くことが近道です。しかし、過去問の回答の解説がなかなか市販されていないため、独自で作成

消費生活相談員資格試験 2019年度(1回目) 4問

消費生活相談員資格試験 2019年度(1回目)4問

 4. 問題①から⑤のそれぞれについてア~オの文章の中から、誤っている文章を2つ選んで、その記号を解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。

 

 ① 以下のア~オは、消費者安全法に関する問題である。
ア 「消費安全性」とは、商品等又は役務の使用等に伴う危険性・リスクがゼロとなるような高い水準の安全性のことをいう。
イ 食べ物により窒息事故が発生し死亡した場合、当該食べ物が消費安全性を欠くことにより事故が生じたものでないことが明らかであるものを除き、「重大事故等」に該当する。
内閣総理大臣は、「消費者事故等」に関する情報の集約及び分析を行い、取りまとめた結果を、国会に報告しなければならない。
エ 「消費安全性」を欠く商品の使用により火災が生じた場合、消費者の生命又は身体に被害が生じていなくても、「重大事故等」に該当する。
内閣総理大臣は、「消費者事故等」の発生又は「消費者事故等」による被害の拡大の防止を図るため必要があると認めるときは、関係市町村長に対し、必要な行政処分をすることを求めることができる。

【解答】 誤っているもの ア・オ

  • ア✖:(4条4項)「消費安全性」とは、商品等又は役務の特性、それらの通常予見される使用又は利用の形態等を考慮して、それらの消費者による使用等が行われる時においてそれらの通常有すべき安全性をいう。リスクゼロではない
  • イ〇:「重大事故等」(法第2条第7項)「 死亡」「負傷・疾病であって、治療に要する期間が 30 日以上、身体の障害が存するもの」「 一酸化炭素中毒」(その事故に係る商品等又は役務が消費安全性を欠くことにより生じたものでないことが明らかであるものを除く
    ウ〇:13条1項:内閣総理大臣は、消費者事故等に関する情報が消費者安全の確保を図るため有効に活用されるよう、迅速かつ適確に、当該情報の集約及び分析を行い、その結果を取りまとめるものとする。4項:内閣総理大臣は、国会に対し、第一項の規定により取りまとめた結果を報告しなければならない。
  • エ〇:「重大事故等」には政令により、商品等又は役務の使用等において、消費者に窒息その他の生命・身体に対する著しい危険が生じ、又は火災その他の著しく異常な事態が生じたこと
  • オ✖:市町村長ではなく、他の大臣に対して。39条:内閣総理大臣は、消費者事故等の発生に関する情報を得た場合において、消費者被害の発生又は拡大の防止を図るために実施し得る他の法律の規定に基づく措置があり、必要であると認めるときは、当該措置の実施に関する事務を所掌する大臣に対し、当該措置の速やかな実施を求めることができる。

 

② 以下のア~オは、消費者安全法に関する問題である。
消費者安全調査委員会は、「生命身体事故等」が発生した場合、生命身体被害の発生又は拡大の防止のために原因を究明する必要があると認めるときは、調査権限を行使するなどして自ら調査を行う。
消費者安全調査委員会は、「生命身体事故等」について他の行政機関が行った調査等の結果については、事故等原因を究明しているかどうかの評価を行うことができない。
都道府県知事及び市町村長は、「重大事故等」が発生した旨の情報を得たときは、「重大事故等」の態様、「重大事故等」が発生した日時及び場所、「重大事故等」の原因となった商品等を特定するために必要な情報等を直ちに内閣総理大臣に通知しなければならない。
エ 工場における施設・機械の故障により当該工場内で就労していた労働者の生命・身体に被害が発生した事故は、「消費者事故等」に該当する。
内閣総理大臣は、財産被害に関する「消費者事故等」について、被害の発生又は拡大の防止を図るため消費者の注意を喚起する必要があると認めるときは、当該「消費者事故等」の態様、当該「消費者事故等」による被害の状況等の情報を都道府県及び市町村に提供するとともに、これを公表するものとされている。

【解答】 誤っているもの イ・エ

  • ア〇 イ✖:15条:消費者庁に、消費者安全調査委員会を置く。16条:調査委員会は、生命身体事故等の原因等を究明するための調査を行う。生命身体事故等について、他の行政機関による調査若しくは検査の結果について事故等原因を究明しているかどうかについての評価を行う。(航空、鉄道、船舶事故を除く)
  • ウ〇:12条:行政機関の長、都道府県知事、市町村長及び国民生活センターの長は、重大事故等が発生した旨の情報を得たときは、直ちに、内閣総理大臣消費者庁)にその旨及び当該重大事故等の概要事項等を通知しなければならない。
  • エ✖:労働上の事故であるため、消費者事故に該当しない
  • オ〇:38条:内閣総理大臣は、消費者事故等の発生に関する情報を得た場合において、被害の拡大又は類似の消費者事故等の発生の防止を図るため、消費者の注意を喚起する必要があると認めるときは、情報を都道府県及び市町村に提供するとともに、これを公表するものとする。

 

 ③ 以下のア~オは、特定商取引法に関する問題である。
ア 権利の販売と称し、CO2排出権や知的財産権が販売された場合でも、役務の提供として、特定商取引法が適用されることがある。
イ 株式や社債等を発行会社が自ら販売する場合(自己募集)については、金融商品取引法では規制されないが、特定商取引法では特定権利に該当するため、訪問販売、通信販売、電話勧誘販売の規制の対象となる。
宅地建物取引業法に基づく免許を受けた業者が、訪問販売で宅地の販売を行ったときは、特定商取引法上の訪問販売の規定が適用される。
特定継続的役務提供は、政令で定められた7つの役務を対象としている。契約金額はいずれも5万円を超えるものと定めており、契約期間については、一定のエステティック・美容医療は1月を超えるものとし、その他の5つの役務は2月を超えるものと定めている。
オ 広告をしている通信販売業者が、その広告に返品特約を主務省令で定めるところにより表示をしていなかった場合、消費者が商品の引渡しを受けた日から起算して8日以内に契約を解除する旨の通知を発信すれば、解除の効力が発生する。

【解答】 誤っているもの ウ・オ

  • ア〇:H28改正前の指定権利制として、「施設を利用し又は役務の提供を受ける権利」のうち指定し、規制対象としていた。(保養施設又はスポーツ施設を利用する権利、映画、観劇、音楽等を鑑賞・観覧する権利、 語学の教授を受ける権利)従来の指定権利のほか、社債等の金銭債権、株式等の社員権を規制対象に追加し、これらを併せて名称を「特定権利」とした(「指定権利」の名称は撤廃)

     「CO2排出権」、「知的財産権」、「シェールガス風力発電の施設運用権」、「水や天然ガスの採掘権」、「外国の土地利用権」といった「権利の販売」と称するものについて、特商法の対象となることを通達で明確化した。

  • イ〇:金融商品取引法に基づく登録業者が行う有価証券の取引については、同法の各種の業規制による消費者の保護が図られることから、特商法の適用除外としているが、株式や社債等の自己募集(発行会社自らによる販売・勧誘行為)等については同法に規定する金融商品取引業には該当せず対象外となることから、これらの取引が訪問販売等で行われた場合には、特商法が適用されることとなる
  • ウ✖:宅建業は特商法の適用除外:<法で適用除外としているもの弁護士業、金融商品取引業宅地建物取引業、旅行業〉<施行令で適用除外としているもの、金融取引に関する役務、電気通信事業、放送事業、運輸に関するものなど。
  • エ〇:特商法上の特定継続的役務提供エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービスの7業種で、契約金額が5万円を超えるもの、契約期間が2ヶ月を超えるもの(エステティック、美容医療は1ヶ月を超えるもの)
  • オ✖:クーリングオフと異なるので書面通知は不要。特商法13条の4:その売買契約に係る商品の引渡し又は特定権利の移転を受けた日から起算して8日を経過するまでの間は、その売買契約の申込みの撤回又はその売買契約の解除を行うことができる。ただし、当該販売業者が申込みの撤回等についての特約を当該広告に表示していた場合には、この限りでない。と書面について書かれていないので不要。(クーリングオフの条文:9条:書面により契約の申込みの撤回又は契約の解除を行うことができる)

 

 

④ 以下のア~オは、社会福祉分野の法律、制度に関する問題である。
生活保護法による保護は、世帯を単位としてその要否及び程度を定めるものとし、個人を単位として定めることはできない。
イ 生活困窮者自立支援法に基づく生活困窮者家計改善支援事業では、事業実施主体となる行政機関が、生活困窮者に対し、家計の状況の適切な把握及び家計の改善意欲の向上の支援とともに、生活に必要な資金の貸付けのあっせんを行う。
社会福祉協議会が実施する日常生活自立支援事業では、福祉サービスを利用する際の様々な手続きや契約、預金の出し入れ、生活に必要な利用料の支払い手続き、年金や預金通帳などの書類の管理等の援助を受けることができる。
エ 民生委員の主な職務は、住民の生活状態の把握及び行政機関への報告であり、住民からの日常生活上の相談への対応や助言は、法律上の職務に含まれない。
社会福祉協議会は、民間の社会福祉活動を推進することを目的とした営利を目的としない民間組織で、社会福祉法に基づき設置されている。

 

【解答】 誤っているもの ア・エ

  • ア✖:生活保護法の4つの基本原則①申請保護の原則(自らの申請に基づいて始まる②基準及び程度の原則(生活保護基準と、実際の収入との差額を埋める形で行われる)③必要即応の原則(保護を必要とする人個々の実情に即して給付内容が決められる。④世帯単位の原則(保護の要否は、世帯を単位として判定される。例外的なケースとして、世帯の一部の方に対して、個人単位で保護を行う「世帯分離」が適用されることもある。
  • イ〇:(生活困窮者自立支援法第3条第5項)生活困窮者に対し、収入、支出その他家計の状況を適切に把握すること及び家計の改善の意欲を高めることを支援するとともに、生活に必要な資金の貸付けのあっせんを行う事業をいう。
  • ウ〇:日常生活自立支援事業は、判断能力が不十分な方などに対し、福祉サービスの利用援助、苦情解決制度の利用援助、住宅改造、居住家屋の貸借、日常生活上の消費契約及び住民票の届出等の行政手続に関する援助等預金の払い戻し、預金の解約、預金の預け入れの手続等利用者の日常生活費の管理(日常的金銭管理)、定期的な訪問による生活変化の察知等を行う。
  • エ✖:住民からの日常生活上の相談への対応や助言は民生委員の役割。
  • オ〇:社会福祉協議会社会福祉法第109条(市区町村社協)に規定され、社協の目的には「地域福祉の推進を図ること」とされている。

  

⑤ 以下のア~オは、全国消費生活情報ネットワークシステム(PIO‐NET)に登録された 2017(平成 29)年の消費生活相談情報に関する問題である(「平成30 年版消費者白書」による)。
ア 消費生活相談件数は、約 50 万件であった。
イ 65 歳以上の高齢者に関する相談について、販売購入形態別相談割合をみると、「訪問販売」の割合は、65 歳以上の全高齢者における割合よりも、認知症等高齢者における割合の方が大きい。
ウ 消費生活相談を販売購入形態別にみると、「店舗購入」よりも「通信販売」の割合が大きい。
架空請求に関する相談件数は、2016(平成 28)年より大幅に減少している。
オ いわゆる仮想通貨をめぐるトラブルに関する相談件数は、2016(平成 28)年より増加した

【解答】 誤っているもの ア・エ

  • ア✖:2017年度の相談件数は約93.7万件で、2016年度(約89.1万件)に比べ増加した。架空請求」の増加が影響している。
  • イ〇:65歳以上の高齢者では、「インターネット通販」の割合が拡大し、2017年は「訪問販売」の割合を上回った。認知症等の高齢者では、「訪問販売」の割合が約4割、「電話勧誘販売」の割合が約2割を占める。
  • ウ〇:「通信販売」に関する相談の全体に占める割合は33.7%であり、2013年度以降、引き続き販売購入形態別で最も高かった。
  • エ✖:利用した覚えのないサイト利用料の請求など架空請求の相談は、2012年度から再び増加傾向にある。2017年度は約19.9万件であり、2016年度(約8.3万件)に比べ大幅に増加した。
  • オ〇:仮想通貨に関する相談が増加しており、「仮想通貨に投資したが儲からない」などの実態不明な投資話に関する相談や、仮想通貨交換業者の消費者の問い合わせ対応に関する相談などがみられた。