消費生活相談員資格試験 過去問解説

消費生活相談員資格試験対策としては過去問を多く解くことが近道です。しかし、過去問の回答の解説がなかなか市販されていないため、独自で作成

消費生活相談員資格試験 2019年度(1回目) 11問

消費生活相談員資格試験  2019年度(1回目) 11問

11. 次の文章のうち、下線部がすべて正しい場合は〇を、下線部のうち誤っている箇所がある場合は、誤っている箇所(1ヵ所)の記号を解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。 

① 未成年者が、法定代理人の同意を得ずにした法律行為は、原則として法定代理人のみが取り消すことができる。ただし、未成年者が、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産をその目的の範囲内において処分したとき、あるいは、㋒自分が成年者であると信じさせるために詐術を用いたときは、法定代理人の同意を得ずにした法律行為であったとしても取り消すことがで
きない。

【解答】 ✖ ア ➡ 未成年の取り消しは本人と法定代理人(親)だできる。

  • 取り消しができないケースは「法定代理人から、処分を許された財産(小遣い)の範囲内」「法定代理人から許された営業に関する取引」「未成年者が詐術を用いた場合」
  • 詐術とは、未成年者が自分を成年者と偽ったり、法定代理人の同意を得ていないのに同意を得ていると偽って、その結果、相手方が誤信をしたことを言う。

 

成年後見人、保佐人、補助人を選任するには、家庭裁判所の審判が必要である。被補助人に関しては、本人以外の者が補助開始の審判を請求する場合、㋑本人の同意を得なければ、審判を行うことはできない。後見開始の審判がなされると、成年後見人には、㋒同意権、代理権、取消権が付与される。

【解答】 ✖ ウ ➡ 成年後見人には同意見はない。

  • 被後見人の場合、たとえ同意を与えたとしても、そのとおりに法律行為をする可能性は著しく低いので、成年後見人には、同意権は不要であるため、認められていない。
  • 後見開始の審判や保佐開始の審判とは異なり、本人以外の者の請求により補助開始の審判をする場合には、本人の同意が必要。これは、自己決定の尊重が理由。

   

消滅時効は、㋐時効によって利益を得る当事者が援用しなければ、その効力が生じない。時効の効力は、㋑時効の起算日にさかのぼる。時効の利益は、あらかじめ放棄することが㋒できない

【解答】 〇 

  • 消滅時効の「援用」とは 時効期間が経過したとしても、消滅時効の「援用」をしなければ、時効にならない。「援用」とは、時効の利益を受けるということを相手に伝えることを言う

  • 消滅時効は権利を行使することができる時を起算点として、この起算点から進行する

  • 時効利益の放棄は、時効が完成する前に放棄することができない民法第146条)。 債権の消滅時効において、債権者が債務者の窮状に乗じて、債務者に時効利益の放棄を事前に強いることを防止するための規定である。

  

④ 「契約自由の原則」は、契約締結の自由、㋐契約の相手方を選択する自由、契約内容を決定する自由等からなる。民法の契約に関する規定には、当事者がこの規定と異なる意思を表示した場合にはその適用を排除される任意規定が多い。詐欺による意思表示について取消権を定めた規定は、任意規定である。

【解答】 ✖ ウ ➡ 強制規定

  • 任意規定とは、ある法律の規定に関して、契約当事者による合意がある場合に、その合意のほうが優先される法律の規定
  • 強行規定とは、ある法律の規定に関して、契約当事者による合意がある場合であっても、その合意よりも優先される法律の規定
  • 詐欺があっても取り消しできないという特約は認められないので、強制規定となる。

 

⑤ 売買契約は、当事者間における㋐申込みと承諾の意思表示の合致によって成立する諾成契約であり、契約の当事者が互いに対価的な債務を負担する双務契約である。最高裁判所判例では、特段の合意等がない限り、㋑契約の成立と同時に所有権が買主に移転するとされている。引渡期日が過ぎても、契約の目的物が引き渡されない場合、買主は㋒代金の支払いを拒むことができる

【解答】 〇 

  • 諾成(だくせい)契約とは、通常両当事者の合意だけで成立
  • 要物(ようぶつ)契約は、現実の物の引渡を要する(例…使用貸借、消費貸借、質権設定契約(動産)、手付契約、寄託契約)
  • (167条)物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる。売主と買主の契約締結時に所有権が移転することになります。
  • 「同時履行の抗弁」双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない(533条)

 

債務不履行には、履行遅滞履行不能不完全履行の3類型がある。債務不履行があった場合の損害賠償請求の要件としては、債務者に㋑帰責事由があることが必要である。履行不能の場合、債権者は㋒催告をせずに契約を解除できる。

【解答】 〇 

  • 履行不能の場合には、「債務不履行の事実」と「損害の発生」に加え、「帰責事由」が必要であると規定されていたが、、民法改正により、履行不能履行遅滞不完全履行を含めた債務不履行全般として、債務者の帰責事由が要件となることを明文化
  • 契約解除には一度催告する必要があったが、民法改正で無催告解除ができると定めました。(履行不能、債務者の明確な履行拒絶の場合等)

 

民法では、詐欺又は強迫による意思表示は取り消すことができる。意思表示をした者に㋐重大な過失があっても、取消しができる。取り消した行為は、㋑初めから無効であったとみなされる。詐欺又は強迫によって売買されたことを知らずに、売買の目的物を購入した善意の第三者に対しては、詐欺の場合は取消しを対抗できない。㋒強迫の場合は取消しを対抗できる

【解答】 〇

  • 詐欺・強迫取消が成立する要件としては、①詐欺・強迫行為がなされたこと、②この詐欺・強迫によって相手方が錯誤・畏怖に陥ったこと、③当該錯誤・畏怖に基づいて意思表示をしたことが必要なので、過失があっても取り消しが可能
  • 取消権は、詐欺強迫などをされた者等に限られ、詐欺・強迫を行った方から取消権を行使することはできない
  • 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなされる
  • 詐欺にかかる取消権も強迫にかかる取消権も追認が可能な時から5年が経過したときは、消滅時効。単に20年を経過したときも同様。
  • 詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができないが、脅迫の場合は善意の第三者に対抗できる。

 

⑧ 請負契約における請負人の義務は、㋐請け負った仕事を完成することである。請負人は、㋑注文者の同意を得なければ、下請業者を使って仕事を完成させることができない。請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、㋒いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる

【解答】 ✖ イ ➡ 自由に下請けを使うことができる

  • 請負においては契約上の完成すべき時期までに内容となる仕事が完成しさえすれば債務は履行されたことになることから、特約のある場合でない限り、請負人は自由に下請負人用いて仕事の完成にあたらせることができる
  • 請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる(641条)

 

⑨ 建物賃貸借契約において、契約期間を定めていなかった場合、民法によれば、賃借人は㋐事由を問わずいつでも解約の申入れができ、そこから3ヵ月を経過することによって契約は終了する。契約期間を定めていない建物賃貸借契約において、民法の特別法である借地借家法によれば、賃貸人は正当事由があれば解約の申入れができ、そこから㋒6ヵ月を経過することによって契約は終了する。

【解答】 〇 

  • 民法617条)期間を定めなかった賃貸借契約は、いつでも両者から解約を申し入れ出来る。契約が終了するのは申し入れしてから土地は1年、建物は3か月、動産等は1日。
  • 借地借家法2 7 条)賃貸人が建物賃貸借の解約を申し入れた場合には、建物の賃貸借は解約申入れの日から6カ月を経過することにより終了する

  • 借地借家法28条)賃貸人による建物賃貸借の解約の申入れは正当事由がなければ、することができない旨が定められている。

 

不法行為に基づく損害賠償では、精神的損害に対する賠償が㋐認められている。未成年者が他人に損害を加えた場合でも、未成年者に自己の行為の責任を弁識するに足りる知能である責任能力がなければ、未成年者自身が不法行為に基づく損害賠償責任を負うことはない。その場合において、未成年者の監督義務者は、㋒監督義務を怠らなかったことを立証すれば、損害賠償責任を負わない。

【解答】 〇 

  • 未成年者が他人に損害を加えた場合でも、責任能力がない場合には、損害賠償義務を負わない(712条)。
  • 過去の裁判例をみると、おおむね12~13歳程度であれば責任能力を認めている場合が多い

  • その代わり、親権者や後見人のように監督義務者が責任を負う。しかし、監督義務者が十分義務を尽くしたのに損害が発生したことを証明した場合は、責任を負わなくてもよい(714条)