消費生活相談員資格試験 過去問解説

消費生活相談員資格試験対策としては過去問を多く解くことが近道です。しかし、過去問の回答の解説がなかなか市販されていないため、独自で作成

消費生活相談員資格試験 2019年度(1回目) 13問

消費生活相談員資格試験  2019年度(1回目) 13問

13. 次の文章のうち、下線部がすべて正しい場合は〇を、下線部のうち誤っている箇所がある場合は、誤っている箇所(1ヵ所)の記号を解答用紙の解答欄に記入(マーク)しなさい。 ※以下は、消費者契約法に関する問題である。

消費者契約法において「事業者」とは、㋐法人その他の団体及び㋑営利の目的をもってなされる事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。当初、個人利用として締結した契約内容を、ある期間経過後、事業のために利用した場合の同法の適用の有無は、㋒契約内容に連続性があれば、契約当初における利用目的によって判断される。

【解答】 ✖ イ ➡ 営利か否かは問わない。

  • 「事業」とは、「一定の目的をもってなされる同種の行為の反復継続的遂行」であるが、営利の要素は必要でなく、また、公益・非公益を問わず反復継続して行われる同種の行為が含まれる。
  • 労働契約に基づく労働は、「事業」という概念には当たらないと考えられる
  •  当初、個人利用として締結した契約内容を、ある期間経過後、事業のために利用した場合の本法の適用の有無は、契約内容に連続性があれば、契約当初における利用目的によって判断される。
  • インターネット契約を当初個人が個人利用としてインターネット事業者との間で締結し、当該個人が半年後通信販売事業を開始した場合、通信販売事業を開始した時点において、当該契約の取消しや変更がなく当初の契約が続いていれば、当該契約については消費者契約となる。

 

② 2018(平成 30)年の消費者契約法の改正では、事業者の不当性の高い勧誘行為が類型化されて、消費者の困惑に起因する意思表示の取消しを認めるべき場合が新たに規定された。例えば、㋐霊感等による知見を用いた告知によって「困惑」させた場合がある。また、消費者の社会生活上の経験不足が不当に利用されていることを要件に取消しが認められるものとして、㋑不安をあおる告知によって「困惑」させた場合や、㋒恋愛感情等に乗じた人間関係を濫用して「困惑」させた場合がある。

【解答】 〇

  • 消費者契約法4条 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次に掲げる行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。
  • ④勧誘を行う者に対して恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ、当該勧誘を行う者も当該消費者に対して同様の感情を抱いているものと誤信していることを知りながら、これに乗じ、当該消費者契約を締結しなければ当該勧誘を行う者との関係が破綻することになる旨を告げること。
  • 生計、健康その他の事項に関しその現在の生活の維持に過大な不安を抱いていることを知りながら、その不安をあおり、当該消費者契約を締結しなければその現在の生活の維持が困難となる旨を告げること。
  • 霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、そのままでは当該消費者に重大な不利益を与える事態が生ずる旨を示してその不安をあおり、当該消費者契約を締結することにより確実にその重大な不利益を回避することができる旨を告げること。

 

消費者契約法第4条第1項第1号は、消費者契約の締結につき勧誘するに際して不実告知がなされた場合の意思表示の取消しを認めている。また、事業者に㋐事実と異なるという認識は不要であり、告知の方法は㋑口頭でなくてもよい最高裁判所判例は、不特定多数に向けられた広告は㋒一律に「勧誘」に当たらないとしている。

【解答】 ✖ ウ ➡ 不特定多数に向けられたものであったとしても、「勧誘」に当たらないとは言えない

  • 「事実と異なること」は、必ずしも主観的認識を有していることは必要なく、告知の内容が客観的に真実又は真正でないことで足りる
  • 「告げる」については、必ずしも口頭によることを必要とせず、書面に記載して消費者に知悉させるなど消費者が実際にそれによって認識し得る態様の方法であればよい。
  • 「勧誘」に関連する最高裁判決平成 29 年 1 月 24 日 事業者等による働きかけが不特定多数の消費者に向けられたものであったとしても、そのことから直ちにその働きかけが「勧誘」に当たらないということはできないというべきである。

 

消費者契約法で規定する「断定的判断」とは、事業者が消費者契約の締結を勧誘するに際し、財産上の利得に関して、㋐将来における変動が不確実な事項について確実であると消費者に誤解させるような決めつけ方をいう。例えば、㋑「この先物取引をすれば、必ず 100 万円もうかる」と告知すること㋒証券会社の担当者がリスクの高い外債を販売する際、「円高にはならないので損はしない」と告知することは、「断定的判断」の提供に当たる。

【解答】 〇

  • 「その他の将来における変動が不確実な事項」とは、消費者の財産上の利得に影響するものであって将来を見通すことがそもそも困難であるもの(例えば証券取引に関して、将来における各種の指数・数値、金利、通貨の価格)をいう。
  • 将来において消費者が財産上の利得を得るか否かを見通すことが契約の性質上そもそも困難である事項について、事業者が断定的判断を提供した場合につき、取消しの対象とする旨を規定している。

 

消費者契約法第5条第2項は、消費者の代理人が、事業者による、いわゆる不実告知等に該当する勧誘行為により契約を締結した場合の取消しについては、㋐消費者の代理人を消費者とみなす旨、規定している。この場合、消費者本人は事業者との間の契約を㋑取り消すことができる。消費者の代理人が弁護士等の事業者である場合、㋒同項は適用されない

【解答】 ✖ ウ ➡ 消費者の代理人が弁護士等事業者であっても適用される

  • 消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示に関し、代理人及び復代理人
    行った意思表示については、消費者本人がなしたものとみなすこととしている。
  • 消費者の代理人が弁護士等の事業者である場合には、消費者と事業者との間「情報・交渉力の格差」があるとはいえないので、消費者契約法を適用するのは適当ではないとの考え方もある。しかし、法第5条第2項においては、消費者の代理人は消費者とみなしている

  

消費者契約法では、㋐消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の㋑法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して㋒消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とされる。

【解答】 〇 第 10 条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効) 

  • 消費者と事業者との間で締結された消費者契約の条項において、消費者が一定の行為をしない場合に、当該消費者が明示又は黙示の意思表示をしていなくても、新たな消費者契約を締結したものとみなすこととされている場合である。
  • 法令中の公の秩序に関しない規定」とは、いわゆる任意規定のことを指す。
  • 「消費者の利益を一方的に害する」消費者と事業者との間にある情報・交渉力の格差を背景として、当該条項により、任意規定によって消費者が本来有しているはずの利益を、信義則に反する程度に両当事者の衡平を損なう形で侵害することを指す。

 

消費者契約法第9条は、消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効について規定している。第1号では、契約の解除に伴う損害賠償額を予定する場合について、㋐当該業界全体における平均的な損害額を超える部分を無効としている。最高裁判所判例は、平均的な損害額の立証責任は基本的には㋑消費者が負うとしている。同号は、例えば、消費者の債務不履行に基づいて事業者が契約を解除する場合には㋒適用される。

【解答】 ✖ ア

  • この「平均的な損害」とは、同一事業者が締結する多数の同種契約事案について類型的に考察した場合に算定される平均的な損害の額
  • 「平均的な損害の額」について、最高裁裁判決は、事実上の推定が働く余地があるとしても、基本的には、消費者が立証責任を負うものと判断した。
  • たとえ消費者の責に帰すべき事由により事業者が解除権を行使する場合であっても、事業者は一定の金額を超える損害賠償等を請求することができないということを規定するものである。