消費生活相談員資格試験 過去問解説

消費生活相談員資格試験対策としては過去問を多く解くことが近道です。しかし、過去問の回答の解説がなかなか市販されていないため、独自で作成

消費生活相談員資格試験 30年度 論文試験(文章例)

平成30年度 消費生活相談員資格試験 論文試験

次の2つのテーマのうち1 つを選び、1,000 字以上1,200 字以内で論文にまとめ、解
答用紙に記入しなさい。

【テーマ1】
 消費者の権利を実現する上で、行政や消費者はどのような責務や役割を果たしてい
くべきか、論じなさい。なお、論述に当たっては、以下を踏まえること。
1.以下の指定語句をすべて用いること(順不同)。
2.指定語句は、単に語句として用いるだけでなく、その意味するところが明確に
なるように、適切に用いること。
3.文章中の指定語句の箇所には、分かるように必ず下線を引くこと。同じ指定語
句を複数回用いる場合は、下線は1回目の箇所についてのみ引けばよい。
4.消費生活センター・消費生活相談窓口、消費生活相談員等の役割を考慮するこ
と。

指定語句

消費者基本法、消費者と事業者との格差、国、地方公共団体、消費生活相談

 「消費者の権利の尊重」「消費者の自立の支援」を基本理念とし、消費者の権利を明確化したのが消費者基本法である。よって、消費者基本法は消費者の権利を実現するための法律である。そしてこの消費者基本法には、消費者と事業者との格差を考慮し、消費者の権利の確保するため総合的な施策を講じることとしている。

消費者と事業者の格差とは何か。一つには商品やサービスに関する情報及び交渉力の格差である。事業者が売ろうとする商品に対する情報は圧倒的質と量で消費者を圧倒している。そして事業者は販売のプロである。

その格差を考慮し事業者には、消費者に必要な情報を明確かつ平易に提供するよう、また消費者の知識、経験、財産の状況に配慮する責務が法に記されている。

消費者は、日常生活において、様々な商品を購入し、様々なサービスを利用している。しかし、時には購入した商品に欠陥があり、生命・身体に危害を及ぼすような事故が発生したり、冷静な判断ができない環境で契約を結ぶことになったり、又はそもそも表示に誤りがあるために合理的な選択ができなかったりといったトラブルに直面することもある。

それらについて、消費者からの相談や苦情を受け付け、問題の解決などに当たるのは、都道府県や市区町村、地方公共団体に設置されている「消費生活センター」を始めとする消費生活相談窓口である。

消費生活センターでは、消費生活相談員が、相談内容により問題解決のための助言を行っている。また、必要に応じて、消費者自身では対応困難な個別事案の解決に向けて、消費生活相談員が直接事業者と消費者の間に入り、あっせんを行うことによりトラブルの解決を図っている。

この消費生活相談の一つ一つが、交渉等により消費者の権利を実現する上で大事な役割を果たすほか、全ての情報が、消費者行政の司令塔としての消費者庁で一元的に集約して、国では必要に応じて、事業者に対する法的措置を講ずるほか、消費者事故等に関する情報について消費者に対する注意喚起を行うとともに、新たな課題を解決するための必要な制度的枠組みを構築する。

そして地方公共団体は、制度的枠組みに基づき地域における消費者行政を実施する。

まさに、消費者・・地方一体となった消費者行政が、消費者の権利確立に大きく寄与していると言ってよいと考える。

最後に、消費者基本法で消費者の努力規定として、消費生活に必要な知識を修得し、自主的かつ合理的に行動するよう努めなければならないとあり、消費者も日常から情報収集をし、トラブルがあった場合は消費生活相談を活用するといった行動が必要である。

また、新たな課題として、環境・知的財産権の保護などにも目を向けていくことが、今後の消費者に求められることである。(1127字)

  

【テーマ2】
 適格消費者団体による差止請求制度に加え、特定適格消費者団体による集団的被害
回復制度が導入された。両制度が消費者被害防止・救済において果たす役割を論じる
とともに、消費生活センター等における相談業務との連携について、論じなさい。な
お、論述に当たっては、以下を踏まえること。
1.以下の指定語句をすべて用いること(順不同)。
2.指定語句は、単に語句として用いるだけでなく、その意味するところが明確に
なるように、適切に用いること。
3.文章中の指定語句の箇所には、分かるように必ず下線を引くこと。同じ指定語
句を複数回用いる場合は、下線は1回目の箇所についてのみ引けばよい。
4.消費生活センター・消費生活相談窓口、消費生活相談員等の役割を考慮するこ
と。
指定語句:不当契約条項、不当表示、2段階型、PIO-NET、個別解決

通常、事業者側の不当な取引による消費者トラブルが発生した場合、消費者自身や消費生活センターなど消費生活相談窓口に相談し、助言・あっせんで被害回復を図る個別解決が一般的である。

しかし、事業者が消費者の求めに応じない場合、被害者である消費者が、加害者である事業者を訴えることになるが、消費者と事業者との間には情報の質・量・交渉力の格差があること、訴訟には時間・費用・労力がかかること、個別のトラブルが回復されても、同種のトラブルが無くなるわけではないことなどから、内閣総理大臣が認定した消費者団体に特別な権限を与えた。

差し止め請求制度は、消費者契約法に違反の恐れがある、事業者の不実告知を行った場合、キャンセルできない等と記載した不当契約条項、実際より優れた内容であるなどを謳った不当表示等があった場合、適格消費者団体が、当該事業者に対し不当な行為をやめるように求めることができる。

また、適格消費者団体の中から内閣総理大臣が新たに認定した特定適格消費者団体が、消費者に代わって被害の集団的な回復を求めることができる制度を集団的被害回復制度という。

これは、被害を受けた消費者から事業者に対して一定の金銭の支払い請求権が生じるものが対象で、特定適格消費者団体が、消費者に代わって被害回復裁判手続きを行い、事業者から被害金額を取り戻すことが出来る。

その裁判手続きは2段階型となっており、事業者の金銭支払い義務の確認を求めて訴訟を提起(第1段階)し、事業者の支払い義務が確定した後、被害を受けた個々の消費者の返金額の確定(第2段階)が行われる。

適格消費者団体・特定適格消費者団体とも、寄せられた情報を基に調査・分析し、不当な行為があると判断した場合に対応します。

そこで、その情報の元になるのが、各消費者が各地の消費生活センター等に相談した情報です。

相談情報は、各消費生活センターに配置されているPIONETとデータベースに入力され、消費者庁等へ情報提供される。

適格消費者団体・特定適格消費者団体とも個人情報を除き、相談情報収集ができるため、消費者個々の消費生活センターへの相談が出発点になる。

よって、多くの相談が寄せられている事実が、差し止め請求、被害回復に結び付くのであり、個々の相談者が各消費者団体に相談してもすぐには動くことが出来ないのが実情である。

消費者・相談窓口・地方公共団体・国そして当該団体の連携があって、差し止め請求や集団的被害回復が可能になることを十分理解することが重要である。(1037字)