消費生活相談員資格試験 過去問解説

消費生活相談員資格試験対策としては過去問を多く解くことが近道です。しかし、過去問の回答の解説がなかなか市販されていないため、独自で作成

消費生活相談員資格試験 2109年度(1回目) 論文試験(文章例)

2019年度(1回目) 消費生活相談員資格試験 論文試験

次の2つのテーマのうち1 つを選び、1,000 字以上1,200 字以内で論文にまとめ、解
答用紙に記入しなさい。

【テーマ1】
 最近の消費者トラブルの状況などを踏まえ、消費者教育がなぜ必要か、また、消費
者教育はどうあるべきかについて論じなさい。なお、論述に当たっては、以下を踏ま
えること。
1.以下の指定語句をすべて用いること(順不同)。
2.指定語句は、単に語句として用いるだけでなく、その意味するところが明確になるよう
に、適切に用いること。
3.文章中の指定語句の箇所には、分かるように必ず下線を引くこと。同じ指定語句を複数
回用いる場合、下線は1回目の箇所についてのみ引けばよい。
4.消費生活センター・消費生活相談窓口、消費生活相談員等の役割を考慮すること。

指定語句

 消費者教育推進法、消費者市民社会、成年年齢の引下げ、学校教育、
 地域における消費者教育

 

 消費者は店舗販売における商品やサービスの購入だけでなく、インターネット通販やカタログ販売など、技術進歩、国際化、生活の多様化により、様々な商品やサービスを、様々な方法で購入している。

そして、それに伴い、消費者トラブルも多様化、複雑化、公になることが遅れる傾向がでてきている。

 全国の消費生活センターにも、携帯電話、パソコン等の通信機器の普及、アダルト、出会い系など悪質サイトからの不当請求や架空請求メール、インターネット通販、オンラインゲーム、SNS、ワンクリック請求など通信サービス、通信サービルを通じた消費トラブル相談が多く寄せられており、消費者トラブルの低年齢化も問題となっている。

 また、新しい商品の発売、便利な決済方法の出現、国境を越えた商品の購入が日常となり、消費者が身につけておくべき知識は日々変化している。

 これらに対応するため、消費者教育推進法が制定され、消費者は、生涯にわたって消費生活について学習する機会が求められ、学校、地域、家庭、職域その他の様々な場を通じ、消費生活に関する教育を充実する必要としている。

 特に、最近の民法改正により20歳から18歳へ成年年齢の引下げられたことは、商品の購入、契約の責任が18歳まで引き下がることになり、若者の消費、契約、様々な取引に関する判断能力を向上させることが急務であり、学校教育の場でも消費者教育の強化が求められている。

 また、都市部に限らず地方でも、高齢者の消費者被害状況を考えると、地域における消費者教育の場の確保も求められている。

 消費者教育は、書籍を読んだり、法律を覚えるだけでは、被害防止につながる効果が少ないことから、消費生活センター及び消費生活相談員等の知識、経験を活かした、事例をもとにした教育が必要と考える。

一方、消費者トラブル、被害から自分を守ることに加え、自ら消費することが、地域、日本、世界の人々にどのような影響を与えるのか、与えているのかを考えることも必要である。

 環境を損なわない、環境にやさしい消費を考える。児童労働、労働搾取、途上国のことを考慮した消費を考える。そして地域社会、経済を応援する消費についても考える。このような考えは「エシカル消費(倫理的な消費)」として、定着しつつある。

これら「消費者教育」「エシカル消費」などを推進していくにあたってのキーワードが「消費者市民社会である。

「消費者市民社会」とは、消費者一人一人が、自分だけでなく周りの人々や、将来生まれる人々の状況、内外の社会経済情勢や地球環境にまで思いを馳せて生活し、社会の発展と改善に積極的に参加する社会を意味している。

 このように高度化、複雑化する社会で、どのように消費をし、その消費を価値あるものにしていくのかそれは個人個人に問われている一方、消費生活センターなどが相談窓口に加え新たな役割としてとらえていくべきと考える。(1187文字)

 

 

  

【テーマ2】
 インターネット取引における消費者トラブルの事例と特徴を具体的に挙げつつ、被
害救済や被害防止のために、消費生活センターはどう対応すべきかについて論じなさ
い。なお、論述に当たっては、以下を踏まえること。
定語句

 非対面取引、SNS、個人間売買、越境消費者取引、特定商取引法

 

「有料の認識がないままサイトを進んだところ、料金の請求画面が表示された」「アダルトサイトの請求画面がパソコンの画面に張り付いて取れない」などアダルト情報サイトの相談は最近が減少してきているが、累積上一番多い相談ではないか。

 「サラサイト商法」は、サイト業者に雇われた“サクラ”が異性、芸能人、富裕者、占い師などのキャラクターになりすまして、消費者のさまざまな気持ちを利用し、サイトに誘導し、メール交換等の有料サービスを利用させ、その度に支払いを続けさせるサイトに関する相談も後を絶たない。

 「無料と思い孫に自分のスマートフォンを使わせたら、利用料金が3万円と高額な請求がきた」など、若者を中心にオンラインゲームの相談も多くなっている。これも、クレジットカード、電子マネーが気軽に使えることになったこと、消費者がこれらの支払いの仕組みをあまりよく理解していないことが原因と考えられる。

 インターネットでは非対面取引であるため、相手の顔、素性、信用性が分からないまま取引するのでトラブルが多くなる。消費生活センターでは、相談があった場合、特定商取引法や電子消費者取引法などを活用し契約の取り消し、返金交渉などを行いますが、相手と連絡がとれなくなると、解決方法がなくなります。

  また、「落札した中古車に、納車後すぐに不具合がおきた」「落札した携帯電話機が送られてこない」など、インターネット等のネットワークを利用して行われるオークションのトラブルも増加している。これは、個人間売買であるため、オークション主催のネット業者から「個人間で解決してください」と言われたり、相手が事業者でないと適用されない、消費者契約法特定商取引法が活用できないこともあり、簡潔な困難なケースである。

 さらに最近は、SNSに表示された広告がきっかけとなったトラブル「SNSの広告を見て「お試しサプリメント」を注文したが、定期購入になっていた」、SNSの知人がきっかけとなったトラブル「SNSの知人から、マルチ商法に勧誘された」など、SNSを利用したために、消費者トラブルに巻き込まれる相談も増加している。

 そして、ネットの世界は国境がない。日本人をターゲットに、日本語で運営されているサイトが多数確認されているが、サイトの表記は日本語だが、海外事業者が運営しており、日本語表記のため安心して取引できるように見せかけて、偽物の商品を販売するサイト、取引後に全く連絡が取れなくなるサイトなどのトラブル相談も多く寄せられている。このような越境消費者取引に対応するため国民生活センターでは、越境消費者センターを開設している。

 ネットトラブルは解決は困難なため、おかしいなと思ったら消費生活センターにすぐ相談すること、そしてこのような情報を集積している各地の消費生活センターが、様々な場所で出前講座や情報提供など啓発活動を積極的に行うことが必要である。(1190文字)